流行の最先端を走る「Z世代」。企業では、これからのビジネスや商品企画で外せない存在となっています。SNSや動画サービスが当たり前のように日常に溶け込むZ世代は、これまでの世代とは異なる価値観や行動特性を持っています。現在、多くの企業がZ世代に注目している背景や押さえておきたい特徴、効果的な戦略や実践で役立つポイントをご紹介します。Z世代向けにアプローチを検討している企業のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。

Z世代マーケティングの基本と重要性

Z世代は、SNSや動画サービスをひとつのインフラとして使いこなしており、情報収集や発信力の高さが特徴。他の世代とは異なる価値観と行動様式を持っています。企業にとってZ世代を理解し、適切にアプローチすることは、これからの市場で勝ち抜くために欠かせない戦略です。

Z世代とは何か？

Z世代は、1990年代後半から2010年代初頭に生まれた若い世代を指します。この世代は生まれた時から携帯電話やスマートフォン、さまざまなSNSが普及した環境で育っています。情報の検索や発信、共有をスマートフォン一台でごく自然に行い、買い物や友人との会話、趣味もネットを通して楽しむのが当たり前の世代です。また、Z世代の特徴として、一人ひとりの価値観やライフスタイルが非常に多様化している点が挙げられます。これは、デジタルを通じてさまざまな文化や価値観に触れる機会が多かったためといえるでしょう。

世代	主なデジタル環境	コミュニケーション手段	価値観・消費傾向
X世代（1965年～1981年生まれ）	アナログからデジタルへの移行期。PC中心	メール、電話。SNSは後から	独立心が強く、ブランド志向
Y世代（ミレニアル世代）（1980年〜1995年生まれ）	PCとスマホを併用	SNS（Facebook、Xなど）	コスパ重視、ワークライフバランス志向
Z世代（1995年〜2012年生まれ）	生まれながらのデジタルネイティブ。スマホ中心	Instagram、TikTokなどビジュアル重視	多様性、自分らしさ重視、共感・体験・社会貢献も重視

なぜ今Z世代に注目が集まるのか

企業がZ世代に注目する理由は大きく2つあります。

ひとつは、今後の消費をけん引する中心世代になると見込まれているからです。たとえば日本では2030年にZ世代以降の人口が全体の3割に達すると予想されており、すでに米国ではZ世代が全人口の約3割を占め、その年間購買力は440億ドルに上ると言われているほどです。

もうひとつは、Z世代が持つ情報発信力やトレンド発信力の高さです。SNSで自身の体験や意見を積極的に発信し、友人や家族、さらには他の世代にも影響を与えています。彼らの間で流行したものがあっという間に広まり、市場全体の流れを左右することも珍しくありません。そのため、Z世代の動向を把握することが、将来のビジネスのヒントになるのです。

参考：「The Future of Consumer Lifestyles 消費生活の未来に関する調査報告書」（消費者庁）

Z世代の価値観と消費行動の特徴とは？

Z世代の消費行動や価値観は、これまでの世代と大きく異なっています。

例えば、デジタルを使った情報収集が中心です。また、ただモノを所有するのではなく、その商品やサービスを使った体験や、そこに込められたストーリーや共感を大切にしています。さらに、社会的な意義やブランドの背景も重視し、時間やお金の使い方についても現実的に考えている方が多いことが特徴です。ネット上での評価やレビューにも敏感で、実際のユーザーの声を重視します。企業側はZ世代の価値観を理解し、寄り添うかたちでマーケティングを行うことが求められます。

多様性と自分らしさを大切にする傾向

Z世代は「人それぞれ違って当たり前」という考え方を自然に持っています。自分らしい生き方や表現を重視し、他の価値観も否定せずに受け入れる傾向があります。ファッションや趣味、SNSの投稿でも、自分の個性を表現したいという思いを持つ方が強く、オリジナリティのある商品や、カスタマイズできるサービスに魅力を感じやすいのが特徴です。また、「推し活」に象徴されるように、好きなアーティストやキャラクターを「推す」ことや、自分の趣味を通じたコミュニティへの参加も盛んで、応援したいものには時間やお金を惜しまず使うという行動が目立つ世代でもあります。

社会課題への関心が高い

Z世代は社会問題への関心が高く、環境問題やジェンダー平等、マイノリティへの配慮などに敏感です。学校教育でSDGsを学ぶ機会が多かったことも影響し、社会貢献活動を行う企業やブランドに強く共感します。実際に、商品購入が寄付や社会貢献につながる場合、購買意欲が高まる傾向が見られます。また「意味のある消費」や「エシカル消費」を意識し、機能や価格だけでなく、ブランドや商品の背景やストーリーにも注目します。現実的な面もあり、サステナビリティが絶対条件ではなく、価格や品質といった基本的な価値が同じなら、より社会貢献につながる方を選ぶという姿勢が広がっています。

Z世代マーケティングを成功に導くポイント

Z世代にアプローチする際は、単なる一方通行の情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションや参加体験が重要です。体験価値やストーリー性を盛り込んだ発信はZ世代の関心を集めやすく、SNSで話題になりやすい企画やコンテンツ設計もポイントとなります。

信頼性のある情報を提供

Z世代は情報の信頼性や透明性を重視します。SNSやWebで多くの情報に触れて育ったため、広告のような大げさな表現には敏感です。ユーザーの体験談や口コミ、専門家や第三者機関による評価を参考にする傾向があり、企業は誠実で正確な情報を発信することが求められます。実際の利用者による声を積極的に取り入れ、公式アカウントでも良い点だけでなく、率直な改善点や反省も開示することで、かえってブランドの信頼度が高まります。

消費体験に意味やストーリーを持たせる

Z世代は、モノを買うだけでなく、そこに込められた意味や物語に共感したいという思いがあります。たとえば、商品やサービスの開発背景や作り手の想いを発信したり、ブランドのミッションや理念を伝えたりすることが効果的です。実際の社会的意義や取り組みと商品を結び付けて紹介すると、よりファン化につながりやすくなります。また、ユーザー自身がブランドの一部だと感じられるような仕掛けや、参加できる企画を用意することも重要です。

トレンドへの感度を活かす

Z世代は新しいもの好きで、SNSやネットで話題になっていることをいち早くキャッチします。流行語や最新のミーム、話題の動画などをコンテンツに上手く取り入れると、共感されやすくなります。また、ユーザーと一緒にトレンドを生み出すようなキャンペーンやイベントを設計することもおすすめです。トレンドの移り変わりが速いので、常に柔軟に新しい取り組みを取り入れる体制づくりも重要です。

流行の震源地に身を置くことで、Z世代のリアルな温度感を捉えやすくなります。

日本最大級のZ世代向けイベント「シンデレラフェス2025」PR事例では、人気タレントを起用したサブステージを設計し、当日の来場数は過去最多を記録しました。

SNSを軸にした発信やコミュニケーションが有効

Z世代はInstagramやTikTok、YouTubeなどのSNSを中心に情報を収集し、発信しています。それぞれのSNSの特性を理解し、ビジュアル重視の写真やショート動画、ストーリーズ、ハッシュタグ活用など、視覚的に訴えるコンテンツを意識しましょう。コメントやダイレクトメッセージを通じて直接ユーザーとやり取りし、双方向の対話を大切にする姿勢が信頼獲得につながります。また、ユーザー参加型の発信も意識し、公式アカウントだけでなくファンの投稿を活用することで、ブランドの魅力を広げることができます。

SNSプラットフォーム	主な特徴	有効なコンテンツ例	注意点
Instagram	世界観の共有、ビジュアル重視	写真、リール動画、ストーリーズ	統一感、UGC活用がカギ
TikTok	爆発的な拡散、トレンド発信	ショート動画、チャレンジ企画	宣伝色を出し過ぎない
YouTube	詳細な情報、ファン作り	レビュー動画、ハウツー、ライブ	専門性と正確性が大切
X	リアルタイム拡散、対話	最新情報、キャンペーン告知	炎上リスクに注意

体験型・参加型のマーケティングを取り入れる

Z世代はオンラインの情報収集だけでなく、リアルな体験にも強い価値を感じます。ポップアップストアや体験イベントなど、実際に商品やサービスに触れる機会を設けることで、ブランドの世界観を五感で伝えることができます。また、SNS投稿コンテストやハッシュタグキャンペーンのように、ユーザーが主体的に参加できる企画も有効です。オンラインとオフラインを組み合わせた体験を設計し、その場限りの特別感やイベント性を加えると、一層記憶に残りやすくなります。

INGが映画『君がトクベツ』で実施した限定試写会施策では、試写会後に参加者自身がSNSで感想を投稿し、共感の輪が一気に広がりました。イベントとUGCを連動させることで、オフラインの熱量をオンラインへ波及させた事例です。

弊社アイ・エヌ・ジーが運営するZ世代コミュニティ「INGteens(あいえぬじーてぃーんず)」は、流行感度が高い一般の高校生・大学生を中心に約6,000名が登録しています。
繋がりを持つコミュニティ間での話題化を目指す施策に向いています。

Z世代に響くマーケティング手法とは

Z世代を動かすマーケティングでは、「共感」や「参加」を軸としたアプローチが求められます。SNSによる拡散力や、リアルな体験の設計がカギになります。

インフルエンサーとのコラボレーション

Z世代は、企業発信の広告よりも、自分が信頼するインフルエンサーやクリエイターのリアルな意見や体験談を重視します。実際に商品やサービスを使ってみた感想やレビューを発信してもらうことで、宣伝色を薄め、ファン層にも自然に届きやすくなります。インフルエンサーを選ぶときはフォロワー数だけでなく、自社ブランドとの親和性や、ファン層の属性を考えて起用すると効果的です。また、PRであることを明示し、ステルスマーケティングと誤解されないようにすることが信頼獲得のポイントです。

ユーザー参加型・UGC活用施策

一般ユーザーが自分で撮影し、投稿した写真や動画（UGC：User Generated Content）を活用する施策は、Z世代に特に響きやすいです。企業の公式アカウントでユーザーの投稿を紹介するなど、双方向の発信を増やすと、共感や参加意欲が高まります。ハッシュタグを使った参加型キャンペーンや、SNSで実際に使った感想を投稿してもらうなど、ユーザーが自然に参加したくなる仕掛けや特典を用意するのがおすすめです。

例えば、クレディセゾンLikeme♡by saison cardのSNSキャンペーンでは、INGteensメンバー88名が自身のカード使用感を発信。リアルな口コミがフォロワー層へ波及し、カード発行数アップに直結しました。

限定性・共感性を高める仕掛け

Z世代の心をつかむには、期間限定や数量限定の商品やサービスを提供するのも効果的です。「今しか手に入らない」という特別感が話題を生み、購買意欲を刺激します。また、ブランドのストーリーや理念に共感したユーザーの声を積極的に発信したり、他にはない体験を作り出すことで、注目を集めることができます。

レビュー・口コミの活用

Z世代は、購入前に必ずといっていいほどレビューや口コミをチェックします。実際の利用者の体験談や感想を積極的に公開し、良い口コミだけでなく改善点や率直な意見も紹介することで、透明性や信頼性を高められます。ユーザーが書き込みやすい環境を整え、フォローアップメールやインセンティブなどを活用して、質の高い口コミを増やす工夫も大切です。

Z世代マーケティングを展開する際の注意点

Z世代をターゲットにしたマーケティングは大きなチャンスである一方、失敗するとブランドの信頼を大きく損なうリスクもあります。ここでは、企業が気を付けるべきポイントを解説します。

過剰な広告感や押し付けを避ける

Z世代は、一方的な売り込みや作り込まれた広告にはすぐに敏感に反応します。リアルな体験や本音の情報、人間味のある発信が好まれるため、ユーザーの声や率直な意見を積極的に伝えましょう。また、双方向の会話や共感を意識した情報発信も忘れないようにしましょう。

トレンドの移り変わりに柔軟に対応する

Z世代のトレンドは変化が速く、昨日流行ったものがすぐに古くなることも珍しくありません。SNSや現場の声を日々チェックし、情報発信や施策のスピード感を意識してください。流行遅れにならないよう、常に社内体制を柔軟に見直し続けることも大切です。

ステルスマーケティングや透明性の低さは避ける

2023年10月からは、広告やPRであることを隠して宣伝するステルスマーケティング（ステマ）が法的にも禁止されています。企業は必ず「広告」や「PR」と明確に表示し、事実やデータに基づいた表現を心がけてください。隠し事や誤解を招く表現は控え、信頼を損なわない誠実な発信を続けることが不可欠です。炎上や不信感につながるリスクを避けるためにも、表現内容のチェック体制を強化し、多様な視点を取り入れる工夫も重要です。

これからのビジネス成長にはZ世代マーケティングを実践しよう

Z世代は、今後の消費の中心を担うだけでなく、新しい価値観やトレンドを生み出す存在です。企業がZ世代の価値観や消費行動を正しく理解し、信頼や共感、参加体験を軸にした施策を継続的に実践することで、これからの成長や市場拡大につながります。

従来の手法にとらわれず、新しいチャレンジや、自社らしいストーリーを活かした発信を心がけましょう。Z世代との信頼関係を築き、単なる消費者からブランドのファンになってもらうことが、今後のビジネスを大きく成長させるポイントです。まずはZ世代の視点を取り入れたマーケティングを始めてみてはいかがでしょうか。

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